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双極性障害と診断されたら知っておきたいこと:病気理解と治療の全体像

Tags: 双極性障害, 診断, 治療, 病気理解, 心の健康

双極性障害という診断を受けたとき、多くの方がさまざまな感情を抱かれることと思います。診断に至るまでの苦しみが理解されて安堵する方もいれば、病名がついたことに戸惑いや不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、双極性障害と診断された方が、病気について正しく理解し、今後の治療に前向きに取り組むための基本的な情報と、病気と向き合うための具体的なステップについて解説します。正確な知識を得ることは、漠然とした不安を軽減し、安定した日常生活を送るための第一歩となります。

双極性障害とは何か?正しい理解から始める

双極性障害は、気分が高揚する「躁(そう)状態」や軽い躁状態である「軽躁(けいそう)状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。気分の波は誰もが経験するものですが、双極性障害における気分の変動は、日常生活や社会生活に支障をきたすほど強く、持続的であることが特徴です。

主なタイプは以下の通りです。

双極性障害は、単なる性格的な問題や気まぐれではなく、脳の機能に偏りが生じることによって発症すると考えられています。この病気に対する正しい理解は、ご自身が病気を受け入れ、周囲に協力を求める上でも非常に重要です。

診断の確定とその重要性

双極性障害の診断は、医師による詳細な問診と、患者さんご自身の気分の波や行動パターンに関する情報に基づいて行われます。診断においては、気分の波の性質、持続期間、日常生活への影響などを慎重に評価し、他の精神疾患(うつ病など)や身体疾患、薬物の影響などとの鑑別が重要となります。

正確な診断がなぜ重要かというと、双極性障害とうつ病では、治療法が大きく異なるためです。特に、双極性障害のうつ状態に対して抗うつ薬のみを使用すると、躁転(そうてん:うつ状態から躁状態へ移行すること)を引き起こしたり、気分の波を不安定にしたりするリスクがあることが知られています。このため、適切な治療計画を立てるためには、正確な診断が不可欠です。

もし診断に疑問を感じる場合は、セカンドオピニオンを求めることも選択肢の一つです。複数の医師の意見を聞くことで、より納得して治療に取り組める場合があります。

治療の全体像:多角的なアプローチ

双極性障害の治療は、症状を安定させ、再発を防ぎ、安定した生活を維持することを目指して多角的に行われます。

薬物療法

双極性障害の治療の中心となるのは薬物療法です。

薬は医師の指示に従い、中断せずに継続して服用することが極めて重要です。自己判断での服薬中止や量の変更は、病状の悪化や再発に繋がる可能性があります。

心理社会的治療

薬物療法と並行して、心理社会的治療も行われます。

これらの治療は、ご自身の症状と生活スタイルに合わせて、医師や専門家と相談しながら進めることが大切です。

病気と向き合うための具体的なステップ

1. 病気を受け入れることの難しさと大切さ

双極性障害という診断を受け入れることは、容易なことではありません。自分自身を責めたり、将来への不安を感じたりすることもあるでしょう。しかし、これはご自身の意志や努力でコントロールできるものではなく、適切な治療が必要な病気です。時間をかけてゆっくりと、ご自身の病気と向き合うプロセスを受け入れることが、治療の成功に繋がります。

2. 情報を集めること

インターネットやSNSには様々な情報があふれていますが、中には不正確なものや、特定の治療法を過度に推奨するような情報も存在します。信頼できる情報源(公的機関のウェブサイト、専門学会、医療機関で配布されるパンフレットなど)から正確な知識を得ることが重要です。また、ご自身の病状や治療に関する疑問は、遠慮なく主治医に質問し、理解を深めていきましょう。

3. 生活習慣の確立

規則正しい生活リズムは、双極性障害の気分の波を安定させる上で非常に重要です。

4. サポート体制の構築

病気と一人で向き合う必要はありません。信頼できる家族や友人、職場の同僚に病状を理解してもらい、必要に応じてサポートを求めることも大切です。また、主治医だけでなく、精神保健福祉士やカウンセラーなど、様々な専門家があなたのサポートをしてくれます。地域によっては、同じ病気を持つ人が集まる自助グループなども存在します。

まとめ

双極性障害は長期的な治療が必要な病気ですが、適切な治療とご自身の病気への理解、そして周囲のサポートによって、安定した生活を送ることが十分に可能です。診断を受けられた今、不安や疑問を感じることは自然なことです。しかし、それを乗り越え、病気と上手につき合っていくための第一歩が、正しい知識を得て、治療に積極的に取り組むことではないでしょうか。一人で抱え込まず、専門家と共に、あなたのペースで病気と向き合っていきましょう。